みずうみのさち

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「食うものに困っていた頃、湖でトゲだらけの生き物が獲れた。丸い身体は猪の成獣ほど大きい。針は釘のように太いし、触覚が三本生えていたから、ハリセンボンではなさそうだ。針に注意してさばくと、半透明の白っぽい身が現れた。小さく切って野良猫にやると、美味そうに食った。ならば俺が食っても大丈夫だろうと思い、口に入れた。ホタテ貝のようなぷりぷりとした食感で、淡泊ながらもわずかに魚の脂のような甘みがある。俺はそれを小さく切り分けて、塩辛に加工した。ちびちび瓶から出して、温かい白米と食えば、腹と心が満たされた。」  この手記を書いた者は、それを食べ続けるうちに皮膚が緑色になり、最期は身体が崩れ落ちて死んだらしい。
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