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展開がおかしすぎる
「王妃の仕事だ」
は? オーヒ? OーHI?
言われている意味が分からずに固まっていると、ベルナルド陛下がもう一度繰り返してくれた。
「王妃だよ。国王の……私の妃だ」
ようやく意味を理解した途端、ボンッと顔が真っ赤に染まるのを感じる。
「なっ、ななな、なん、わた……?」
驚きすぎて呂律が回らなかったけれど、陛下はわたしの言わんとすることが分かったらしく、わたしの手を取って、優しい笑顔を浮かべながら答えてくれた。
「リーゼロッテ嬢が気に入ったんだ。私のために一生懸命になってくれる姿が愛おしいと思った。まずは婚約者からで構わないから、私の側にいてくれないか?」
わたしを見つめる眼差しに確かな熱が感じられて、ただでさえ赤い顔がさらに熱くなる。
こんなに美形で美声のハイスペ国王に求婚されて、断れるわけがない。
それに、いつも陛下を遠くから見つめ続けていたわたしは知っている。
ベルナルド陛下が誰よりも尊敬に値する人だってことを。
「……はい、わたしでよければ」
わたしは掠れ声になりながらも、心からの気持ちを込めて返事をした。
◇◇◇
そして、なんやかんやあって、今日はベルナルド陛下とわたしの結婚式だ。
わたしはただ、裸パレードを回避しようとしただけなのに、まさかこんなことになるとは。
そもそも、『裸の王様』の世界で、こんな世紀の玉の輿ラブストーリーが繰り広げられるだなんて、展開がおかしすぎて笑うしかない。
「どうかしたかい、リーゼロッテ」
隣に立つベルナルドが私の頬に手を添えて尋ねる。
「いえ、こんなこともあるんだなと思いまして」
「はは、こうして君を妃に迎えられるのは、ある意味、トマスとハンスとデベソー王のおかげだな」
ちなみにトマスとハンスは処刑は免れ、デベソー王への賠償金と慰謝料の支払いのため、我が国で役人監視の下、パントマイム芸人として毎日舞台で働いている。評判は上々のようだ。
「色々ありましたけど、わたし、とても幸せです」
にっこりと微笑んでそう言うと、ベルナルドは少し屈んで、私の耳元で囁いた。
「私も幸せだよ。愛している、リーゼロッテ」
不意打ちの愛の言葉に思わず赤面すると、ベルナルドが満足そうな顔で私の手を取る。
「さあ行こう。国民が待っている」
そう、これから結婚披露のパレードが始まるのだ。
もちろん身に纏うのは、魔法の服なんかじゃなくて、純白のタキシードとウェディングドレス。
「国中に幸せのお裾分けをしましょう」
わたしとベルナルドは顔を見合わせて微笑むと、大勢の国民が歓声を上げ、手を振って迎えてくれる大通りに確かな一歩を踏み出した。
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