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一件落着
予め示し合わせていたかのように、王宮兵士が手際よく二人の詐欺師を捕らえて縄を巻く。
「へ、陛下! これは一体どういうことですか!?」
トマスが焦った様子で尋ねる。正直、わたしも全く同じ気持ちで陛下を見つめると、ベルナルド陛下はさっきまでの楽しそうな表情が嘘だったかのように、詐欺師どもに厳しい眼差しを向けた。
「詐欺の現行犯で逮捕する。国王相手に悪事を働こうという度胸は認めるが、罪を見過ごすことはできない」
…………え? 待って、もしかして陛下は本当は騙されていなかったってこと?
わたしがあまりの衝撃に呆けていると、ハンスが大声で喚きだした。
「こんな仕打ちはあんまりです! 詐欺の証拠はあるんですか? 縄を解いてください!」
どうにか助かろうとみっともなく足掻く姿に腹が立つが、確かに証拠があるのかは気になる。
国王が黒だと言えば、白いものも黒くなるのかもしれないが、ベルナルド陛下はそういうことをするような人には見えない。
きっと何かあるのだろうと思っていると、陛下が淡々とした調子で語り始めた。
「まず、お前たちには初めから "影" を付けて四六時中監視させていた。それゆえ、お前たちの言動はすべて把握している。さらに、お前たちが眠っている間に三度、機織り機と仕立て用のトルソーをすり替えた。すり替えた翌日もお前たちは全く気付くことなく作業を続けていた。そして、ファラウェイ王国からお前たちの手配書が届いている」
そう言ってベルナルド陛下が掲げた二枚の紙には、『この顔にピンと来たらご用心! 悪質な詐欺師です』という文言とともに、トマスとハンスにそっくりな似顔絵が描かれていた。
悪質な詐欺師どもは、俯いてギリリと歯を噛みしめている。
「遠い異国で上手く騙せたから味をしめて、この国でも荒稼ぎしてやろうとでも思ったか? 残念だったな。辛い目に遭ったデベソー王が、二度と同じ被害者を出さないようにと各国に手配書を回してくれたのだ。私はお前たちを現行犯で逮捕するため、騙された振りをしていたというわけだ」
あ、なるほど、そのデベソー王が本来の裸の王様の人だったってことね……。
そしてベルナルド陛下は最初から証拠確保のために動いていて、わたしが心配するまでもなかったと。
やっと理解しました……。
「この者たちを牢へ連れて行け」
ベルナルド陛下が命じ、トマスとハンスが兵士に引かれて牢へと連れて行かれる。
あとには大臣と兵士、そしてわたしが残された。
えっと、これからどうすればいいんだろう……。
一件落着したし、「じゃあ、わたしはこれにて……」ってオサラバしちゃってもいいかな……?
どうやってこの居た堪れない場所から逃げ出そうかと考えていると、陛下のよく通る声がわたしの名前を呼んだ。
「リーゼロッテ嬢」
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