夫婦の契り

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宗一さんと雅冬さんの三人で食卓を囲むと、家族の心地良さを実感する。 宗一さんがお父さんで、雅冬さんが面倒見の良いお母さんみたいだ。それだと俺と宗一さんの関係がめちゃくちゃだけど、それぐらいの安心感がある。 本当に、幸せなんだ。もう充分すぎるほど────。 「白希、お風呂沸いたよ」 「あ! ごめんなさい、俺が入れようと思ったのに!」 「いいんだよ。なにか集中してると思って、声を掛けないでおいたんだ」 夕食を終え、雅冬が帰った後、白希は自分の部屋のデスクで書き物をしていた。開きっぱなしのドアの先から、宗一が微笑む。 「またバイト先の勉強?」 「勉強はさっき終わりました。今は日記を書いてまして……」 昨日本屋で買ったばかりの、白いダイアリー帳を翳す。 「俺、記憶力ないので……嬉しいことや悲しいこと、その日感じたことを文字にしようと思ったんです。宗一さんと婚姻届を出しに行った時のことも、忘れないように別のページに書き記しました」 「おやおや」 宗一さんはゆっくり歩いてきて、白希の頬をつついた。 「良いことだね。せっかくだから私もやろうかな。デバイスじゃなくて、紙に書くのは特別感がある」 「わぁ。是非ぜひ!」 そう言ってもらえたのが嬉しくて、さっそく次の日、バイト帰りに本屋に寄った。初めて来た時は広過ぎて迷ってしまったこの場所も、今ではほっとする。二階から五階まである書店だからエスカレーターで移動しつつ、文房具コーナーを見て回った。 本屋は基本静かで落ち着く。好きな場所のひとつだ。 ペンや万年筆もお手頃な価格から二度見してしまう価格のものまで揃っている。宗一さんは仕事で良いものをたくさん使ってるんだろう。とすると、種類も分からない自分がプレゼントするのは微妙だ。 俺は書き味にこだわりはないので、一番安いペンと替えのインクを手に取る。 うーん……。 十分以上悩みに悩んで、一冊のダイアリー帳を手に取った。
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