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同じくスーツ姿の宗一さんが現れた為、思わず声が弾んでしまった。彼は腕を組み、持ってた鞄を雅冬さんに渡した。雅冬さんは露骨に眉間に皺を寄せる。
「おい、もう業務時間外だぞ」
「まぁまぁ、……白希、もしかしてお友達?」
「はい。ええと友達で先輩で」
「あ~、先生は言うなよ! 初めまして、文樹です」
二回連続で自己紹介をしなければいけなくなり、文樹さんも大変だ。なにかフォローをしようと考えてると、彼はこちらに耳打ちしてきた。
「この人がお前の旦那さん?」
「はい。宗一さんです」
「うっわ。やば……仕事できそうだし、超イケメンじゃん」
文樹さんは眩しそうに手をかざし、宗一さんに頭を下げた。
「お前からは愛されオーラが常に漂ってると思ってたけど、納得した。この感じはやばい」
何がやばいのか分からないけど、褒められてるんだろうか。いつもと違う様子の文樹さんを宥めてると、宗一さんは閃いたように指を鳴らした。
「そうだ。文樹君、もし良かったら一緒に食事しないかい? この近くに美味しい水炊きの店があってね。寒いからあたたまると思うよ」
「え、でも急に悪いですよ」
「遠慮しないで。いつも白希のことを気にかけてくれて、本当に感謝してるんだよ」
宗一さんは少し屈み、最高の笑顔を浮かべた。俺はようやく慣れてきたけど、初めてその笑みを向けられた文樹さんはかなり動揺している。
「そ……それでしたら、是非……」
「よし、それじゃ早速行こう! 雅冬、悪いけど店に電話してくれ」
「だから俺は業務時間外だっつーの!」
「そう怒らないで。いくら飲んでも構わないから」
不満全開ながら、雅冬さんは席の予約をとってくれた。仕事終わりに突然巻き込んでしまって本当に申し訳ない。
でも宗一さんはとてもご機嫌そうだ。
「なぁ白希、宗一さんてキラキラし過ぎじゃね? 人種が違うっていうか……破壊力やばい」
「そうですね。結構押しが強いときもありますけど……」
秘書付きということもあり、文樹さんは珍しく萎縮している。でもそこは、宥めるように彼の手を引いた。
「大丈夫ですよ。この俺が安心して話せる人ですから……文樹さんと同じで、とても優しいんです」
「はぁ~……。いや、俺はそんな優しくないけど……」
彼は呆れたように返すけど、全然そんなことはない。俺からすれば、全員優しいの塊みたいな人だ。
「優しいですよ。文樹さんは俺の自慢ですもん」
前を歩く二人の背を見ながら、はっきり告げた。
いつだって俺にとっての“一番”は、自分ではなく周りにいる人。憧れで、誇りで、守りたい存在だ。
そう言って笑うと、文樹さんは恥ずかしそうに笑った。
「そんなこと平然と言えんのお前だけだよ。マジで絶滅危惧種」
呆れを通り越してしまったのか……少し不安に思っていると、不意に袖を引っ張られた。
「白希。サンキューな」
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