鏡のように、きみが笑うから

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ふしぎだね 会えない時間ほど わたしのこころに膨らみすぎるあなた 月と地球の引力みたい どんなに離れていようと、影響をあたえ続けている あなたにとって、わたしもそうなれたらいいな きっと、知りもしないでしょう この日を わたしが、どれだけ待ちわびていたのかを この日を特別にするために どれだけ全力を懸けていたのかを 美容院に行ったばかりの髪も、流行りの服も、ふだんの倍以上のメイク時間も、あなたのすきなかおりの香水も、ぜんぶぜんぶぜんぶ… いつもの公園の噴水まえ きっと、あなたは約束の時間ぎりぎりに着くことでしょう 自転車 息を切らして そして わたしに会って、開口一番に「似合ってるよ」って 「とってもすてきだよ」って、まるごと ぎゅっと褒めてくれたら その瞬間、わたしの努力は はじめて報われるんだよ 意味が光って 理由に抱きしめられるの わたしは嬉しくて、それ以上に恥ずかしすぎて  「ありがとう」を、いえない気がする だから じっと、あなたをみつめることにしよう わたしをみつけてくれて ありがとうって 鏡のように出会えたこと、感謝したい ねえ、不安をかかえすぎて きもちが迷子になりそう そろそろ はっきりさせて もう、わたしのこころは あなたでいっぱいになってしまいました あなたはどうですか? あなたのこころに、わたしは住めていますか おそろいの思い出を 繰り返し再生することはありますか あなたにとって、わたしも そうじゃないと困ります こんなに がんばってるのに 対等なこころで かかわりたいのです 「早く行こうよ!」って、きみは 子どもみたいに駆けて行き 不意にふり向いて、わたしに手をふる とびっきりの笑顔で 名前を呼ぶから あっという間に、ふたりだけの王国 胸がふるえる わたしが つられて笑いかえし、今行くよなんて  がらにもない大声をだすと きみはうなづいてくれる そうして 大きく手をふってくれるから わたしは泣きそうになる ねえ、あんまりはしゃいでいたら アニミズムの魂に見咎められちゃう ああ、こんなに なにもかも尊くて、とほうもない、かけがえのない、誇らしい愛おしい感情を わたしは、あと どれだけ持ち続けていられるのだろう どうすれば ああ、どうすれば―― じぶんを好きになってくれる人のことだけ、好きになれたらいいのに…… そして、それなのに けっきょく最後は あなたに会いたいというきもちが、すべてを凌駕する 会いたい きみに会いたい でも 少し、こわいよ もうすぐ会える ああ、こわい きみに会いたい 会いたい――
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