Episode1

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 高橋さんも帰っただろうか。  今日一日意識的に頭から追い出していた高橋さんが急に頭の中に現れる。  無意識にぶんぶんと頭の周りで手を振っている自分にはたと気付く。  高橋さんを頭の中から追い出そうと、勝手に手が動いていた。  もう疲れてるから早く帰ろう。  誰かに見られてなかったかを確認してから、早足で車に向かう。  何も考えたくなくて、いつもは朝聞く英会話アプリを開き、爆音を車内に流す。  英語のおかげで余計なことを考えずに自宅に到着する。  流れ作業のようにシャワーを浴び、洗濯をして、明日の準備を終える。  冷蔵庫から缶酎ハイを取り出す頃には日付が変わるちょっと前の時間になっていた。  見なきゃいいのに、仕事のメールが気になって会社のスマホを手にとる。  缶酎ハイを一口飲んでから、メールチェックをする。  順番に見ていくと、今日なぜか俺の頭をごちゃごちゃにしてきた本人からメールが届いている。  送られた時間を見ると今から30分くらい前の時間だ。  彼女は一体何時まで仕事をしているつもりだろうか。
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