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漂流〜1日目〜
ザァザァ....ザァザァ....🌊🌊
「おい、起きろぉ」
「んぅ? ……うぅっ、あれ?」
そこは波に揺れる小舟の上だった。
付近は霧のかかった海だと潮騒が教えてくれる。
目の前には声の主であろう人物がいた。
彼は笠を目深に被り、ゆっくりと舵を取っている。
まるで漣に心を通わせているようだ。
理解出来ない状況に視界を振り回し、
手の甲を抓った。
けれど、私の単純な思考回路では、
納得のできる回答は出なかった。
あの時のことは曖昧でどうも思い出せない。
「はぁ、一旦寝よう」
っと、瞼を閉じた。
「⋯⋯お客さん?
二度寝はいいっスけどそろそろ着きやすぜェ」
っと、彼は気だるげに言った。
「っあ...分かりました」
少し気まずい時が流れたが、徐々にモヤが晴れ、
水平線の先には、
どこか帰郷の念が湧くような町並みが広がっていた。
そして、物静かに聳える灯台を過ぎ、埠頭を抜け、
木材と石積みで整備された港に到着した。
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