プロローグ

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 【夙夜夢寐】 寝ても覚めても、一日中思い続ける事 ー  20××年6月。S県N市13時。  この日は、じんわりと湿気が纏わりつく夏の一歩を感じさせる曇天。  駅付近で経営されているカフェがある。ここは個人店のようで、周りのお客さん達の話しを耳にすると地元の人の行きつけのようだ。それにしても……、 「……桃のルイボスティー、美味しいーー!!」  あ、申し遅れました!  私は、〈金森 千里(かなもり ちさと)〉。フリーライター、二年生です。  先月の中旬に雑誌の特集のお仕事を初めて頂きました。やっと貰えた初仕事……歓喜乱舞です!!  なので今回は。  〈とある方に〉特集の取材を、電話でお願いして、お願いして……!  自宅の電話前で土下座してまで、お願いしまくって!!  やっと、許可を頂きましたぁぁああ!!  そう!その方は、この日本で初めて国から公認された方なので……世の中の女性達が注目する事は間違いないッ!!  私だって、知りたいものッッ!!  おっと……!失礼しました。つい、興奮をしてしまった。   「すみません……。お待たせ致しました、金森様でしょうか?」 「あ、はい!は……初めまチ……じゃなかったッッ!!初めまして、金森です。 この度はお忙しい中、特集の取材を許可して頂きありがとうございます!!」 (……噛んじゃったァァアアッッ!! やっちまったよォォ!!しかも、〈初めまチ〉って何!?馬鹿なの!?私!)  ご本人さんに会えて、緊張してしまったのか思わず声が裏返ってしまう。会いたかった方だから尚更だ。 「ふふッ……こちらこそ、ありがとうございます。 良かったぁ〜、金森さんが良い人そうで。私ね、当日まで緊張してたんですよ〜。 だって、初対面前の通話で 『お願いします、取材させてください! そうしないと私……わたし、職を失って路頭に迷って、ソープで働かなくては生きていけなくなりますぅぅうう!!』 って、勢いよく言われたらこちらが折れるしかなくなっちゃいますよ」 「え!……そんな事言ってましたっけ!?」  え……。もうさ、ソレ。  脅してんじゃんッッ!?私!やっばァ……、気をつけよ。 「その節は、大変失礼致しました! 改めまして。私、〈金森 千里〉と申します。 よかったら、こちらの名刺をどうぞ」 「ふふふッ。大丈夫ですよ〜、気にしないでくださいね。 えと、名刺ありがとうございます。こちらこそ、改めまして……」  私、〈神龍時 風羅(しんりゅうじ ふうら)〉と言います。  少々猫目で二重の彼女。世の中で言う美人というのは、この事であろう。  でも、その笑顔は年相応の二十代で無邪気さが残ってるが、淡く儚げさもある。  その後、「宜しくお願いします」と言った澄んだ湧水のような透明感のある声色が、私の耳に心地良い。  共に、頭を下げた前下がりの黒髪ボブヘアーが、さらりと外の日の光に当たり濃い翠色に変化する。同性の私でも、見惚れてしまう程だ。  ーー 翠色冷光 という言葉にピッタリだと。ふと、そう思った。  これが、私と神龍時さんの初対面である。 「ーーさっそくですが、今から取材をさせて頂きますので宜しくお願い致します。 では。まず、最初にキッカケを教えてください」  さて!今回の取材を受けて下さる方が来ましたので。  私の心の独談会はこれまでにて ーー  
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