7人が本棚に入れています
本棚に追加
ケジメの意味
ーー ケジメをつけてくる
彼女から、掌サイズの手紙を受け取った金森。手紙の中身を無意識に呟く。
(コレは、本当に訳アリだな……)
内心呟き、彼女の方へゆっくりと視線を移す。
「〈ケジメ〉とは……?どういう事でしょうか??神龍時さん」
自分でも驚いてしまう重めの声色。こんな事言われたら、萎縮して返答できなくなってしまうだろう。
話題を切り替えた方が良い、と口を開こうとした刹那 ーー
「この当時の彼ね、ご両親に内緒で私と同棲していたんです」
急な展開に、取材用のメモを滑らかに執筆していた金森の手が停止した。
そう、この当時は〈禁止〉されていたからだ。
ーー 【妖魔と人間】の同棲。
正確には、人間に化けている妖魔限定だが。
海外で問題無かったが、日本だけは頑なに拒否していた。
数年前の〈とある事件〉によって ーー
◇◇◇
狼男と同棲していた仲睦まじいカップルがいた。
満月の夜。
狼男になった彼が野生化してしまい我を忘れ、自分の彼女を喰い殺してしまったのだ。
だが、その後が大変だった。
加害者を実刑判決に下したくても、妖魔の世界の住人を怒らせたら戦争になってしまうなどの議論が、国会中継で一ヶ月行われていた程にだ。
最終結果。ーー【妖魔と人間の同棲を禁ず】
これが公表されて以来、異種間恋愛していた者達の同棲生活が強制終了となった。国は、〈生命の危機を考えて〉という理由で発表した。
だが実際は、ーー逃げたのだ。
妖魔の世界でも、人間を毛嫌いしている者もいる。
(神龍時さんの相手のご両親は、たぶん人間を ーー)
だが、ふと疑問に思った。
同棲•結婚はアウトだけど、それ以外は問題無い。なのに……、
「……この理由で、〈ケジメをつけてくる〉というのは大袈裟かな……と思いますが?」
言葉の失態を再度しないように、発言を配慮する金森。
コレは、仕事。友達同士の世間話では無い。
そんな仕事モードの彼女に、風羅はバックから写真を取り出す。その顔つきは観念したような笑顔。
「金森さん……凄いですね。そんな事聞かれたの初めてです。
解答をお渡ししますね」
そして、写真を金森の目の前に静かに置く。
そこには、意外なモノが写っていた。
「……子供が、二人?」
ますます、意味が分からない。なのに、目の前の彼女は先程より愛情深い微笑み。
「神龍時さん、この子達は……いったい?」
「……私達の子供、0歳時の双子ちゃんです」
「……え?」
「私達、今で言う〈授かり婚〉なんです」
最初のコメントを投稿しよう!