アノネ・ウィルス

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 家の裏の森で突然大きな音がして、行ってみるととてつもなく大きな物体が横たわっていた。  どういう具合か煤だらけで、ところどころ黒煙が立ち上っている。木々はなぎ倒され、物体の頭上に太陽の白い光が落ちていた。  火の手が上がって燃え広がったりしてはいけない。そう考えてじっと見守っていると、煤の中から手が伸びてきた。白い手。人の手のようだ。  手はくすぶった物体につかまりながら胴体を引っ張り上げて、やがてすっと立ち上がり、確かに人のかたちになった。  白いマシュマロのような服を着ているが、それも煤だらけになっている。頭を覆う丸いものを外すと、中から人の顔が出てきた。人間のようだ。僕と同じ人の形をしている。  人間。だけど知らない人。  知らない人に会うのは、はじめてだった。  その人は大きく息を吸って、吐いた。  そして僕を見て、 「アノ」  と、言った。 「アノ。イマ、セイレキナンネンデスカ?」 「?」 「アノネ。ワタシ、ニジュウイッセイキカラキマシタ。ココハ、ドコデスカ?」
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