お館様、改めさせて頂きたい。

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 奥に座するは甲賀忍軍が首領。その御前。  少女が三人、平に平にと頭を下げている。  紙を通した蝋燭の薄く柔らかい灯り。しかし浮かび上がる老人の顔は固く、眉間には深い皺が刻まれている。 「ウホゥ(面を上げぃ)」  脇に控えていた下忍衆の指南役、小頭であるコンガが重々しく口を開いた。一見して町人の格好をしているただのゴリラだが、その実、諜報の任により『甲賀シティ』に潜伏するただのゴリラである。 「ウホゥ(面を上げよと申しておる)」  ゴリラ故、口寄せが得意な忍をおいて意思の疎通はとれない。でも強めに二回言われたので、三人の少女はなんとなく察して頭を上げた。 「……………」  三者三様、とても美しい少女達である。  決意に顔を引き締めている中央の少女は、祖父であるお館様を凛として見据えている。向かって右の少女は少しふざける様に、しかし穏やかな笑みを浮かべ、反対に座す少女は畏怖に表情を強張らせながらも、意気込みに頬を赤く染めている。 「して、咲耶よ?」  低い声で短くお尋ねになるお館様。  三人の中央。咲耶と呼ばれた少女が座ったまま一歩前に出る。 「お館様。我等三忍、任務の進捗と意見に馳せ参じました」 「ウホゥ(一介の下忍がお館様に御意見を?)」 「よい。ゴリラ控えよ」 「ウホゥ(某はコンガに御座る)」 「知らんわゴリラ黙っとれゴリラ。ゴリラぁ」 「ウホゥ(´・ω・`)」 「咲耶、申せ」 「はっ!」  促され、咲耶の表情が一層に引き締まる。 「先の大戦による男衆の激減。忍不足への対策として打ち出された『にんかつっ(忍だけに)』において、我等三忍は現在、里に若い男性を引き込む任にあたっております」 「うむ、くノIドル計画じゃったか?」 「はっ!差し当たりSNSにアカウントを設け日々動画などを配信しているのですが…」  と、そこまで述べて言葉を止め、咲耶は少し俯いた。言い淀む孫娘に、しかしお館様はあくまで「ですが、なんじゃ?」と厳格な口調を崩さない。 「申せ」 「はっ!あの…」  なおも躊躇う咲耶。僅かな沈黙の後、やがて決意をした様に再び顔を上げる。 「お館様、『ニンニンっ!』ってかけ声、改めさせて戴きたい」
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