生きた時、死んだ時「おめでとう」をください

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「此処だよ。君の世界は此処で止まってるんだ」 挨拶の子が、足元を指さす 私は4人で扉の向こう側を歩いていた そして、連れてこられた、ある場所 あぁ、そうだ… なんとなく、全てが分かった気がした 「此処は何処なの?」 私は、もう一度、悪魔に聞く しかし、さっきよりもハッキリと聞いた 「ひとつ答えるなら、貴方が死んだ時の記憶喪失世界よ」 悪魔は微笑み答えた 「やっぱり、私は此処で…」 足元に広がる地面に触れる 冷たいコンクリート 私は、確かに其所で死んでいた 血の熱さや痛いはずなのに痛くない身体のダルさ そして、この世になんの感情も湧いてなかった私 生々しく記憶が蘇る どうにもこうにも、私は飛び降り自殺をしたらしい 死体こそ其所には無かったが、記憶がそう言っていた 「さっきまでいた場所は、死者がたどり着く最初の場所?」 私は3人に聞いた 川なんて物や音は無かったけど、三途の川的な所だったんだろうか? 「ちょっと違うかしら?」 悪魔が答える 「君は特別」 挨拶の子が答える 「迎えに来たの」 無表情の子が最後に答えた 「そういえば、私を待ってるとか…」 初めの方、挨拶の子がそう言っていたのを思い出した 「うん。此処はね…」 挨拶の子が、無表情の子を見る 「君は、何故死を選んだの?」 無表情の子が、私に聞いた 「え、っと…」 すぐ答えられない私 記憶を辿る 何故、死を選んだのか… なぜだろうか? 「分かるはずもない。 だって、君は今、生きても死んでもいない」 無表情の子が淡々と言った そして、こうとも言った 「これから生まれ生きるんだよ」
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