生きた時、死んだ時「おめでとう」をください

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死とは恐れるものではなくて、私にとって光だった 生とは楽しいものではなくて、私にとって闇だった 何故そう思うのか 限りなく答えに近いのは生まれ育った環境がひとつだと思う でも、それも可能性のひとつに過ぎなくて、本当の答えは分からない 「目標も何も無い、この世界に意味なんてあるのか?」 私は空に問いかけた 答えも応えもない気がした 「心残りはない?」 今度は、自分に問いかける 「…ないよ」 答えは簡単に出た 私は足を、屋上から踏み出した 私の心の中は、なんにも無かった 頑張ってきた仕事、関わってきた人の声 楽しいと感じていた趣味や残した家族とか なんにも、ちっとも響かなかった 飛び降りる途中浮かんだものはひとつも無くて、走馬灯なんてものは無いんだと思った そう思えるくらいには、ゆっくり感じれた瞬間だった 「ぐちゃっ!!!」 言葉では、そう音を表せざるおえない なんとも表現出来ない、人間が壊れる音が響いた 世界は、残酷と言うべきか 世界は、美しいと言うべきか 子供の頃、親に隠れてリスカをしたことがある 腕から流れる血は、何故か美しく見えた 世界は真っ黒なのに、そこだけクリアに見えて、真っ赤な血が綺麗にリアルだったのを覚えている 死にたかったけど死ねなかった幼少期 生きる意味も死ぬ意味も見当たらなくて でも、死にたいと願ってしまった幼い私 やっと、やっと、夢が叶ったよ 何故、死を夢と語るかは分からない ただ、リアルに何もなったからとしか言えない 「世界は、残酷で美しく、人間は馬鹿で賢い」 私の隣で悪魔は微笑む 「そうかもね。 貴方は私を迎えに来てくれたんだね」 「えぇ、行きましょう」 私は、手を差し出す 飛び降りた私に振り向きもしないで、死んだ私は悪魔に導かれた
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