生きた時、死んだ時「おめでとう」をください

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どういう訳か、私はまた生まれるらしい もっといえば、死んでいたわけだから、これからが人生らしい 私が飛び降りた時、それは私にとって死ぬ儀式みたいなもんだった でも、挨拶の子と無表情の子が言うには、産声をあげる前みたいなものだったらしい そして今は、もう生まれる寸前みたいな状況って訳だ つまり、輪廻転生ってこと? いや、あんまり理解出来ていない 多分、ちがう 言うなら、私は死んでいたわけで 死者の国を生きていたと言うなら、あまりにもリアルすぎる人生だった でも、なんにも感じない人生でもあったから、死者の国と言われれば納得する自分もいた 「死者の国より、うんと楽しいよ」 無表情の子が、はじめて嬉々として言った だからだろうか、本当に楽しそうだと思った さっきからだんまりの悪魔を見る すると目が合った 「どうしたの?」 悪魔が首を傾げる 「さっきから黙ったままだから、なにかあるのかなって…」 「貴方が生きていた世界は本当に死者の国だったのかしら?」 「えっ」 私は、挨拶の子と無表情の子を見る 2人は、顔を見合わせて私を見た その目は、なんだか不穏で暗くて怖くも見えた 「貴方の仕事は、運ぶだけ」 そうでしょ?と、無表情の子 「でも、彼女にも権利はあるって僕は言ったよ」 挨拶の子がすかさず言う 「むぅ…」 無表情の子は、あからさまに不機嫌になる 「君の身体はまだ病院だよ」 挨拶の子は、私に言う 「そうなの?」 「そうよ。まだ生死の狭間に居ることに変わりはないの。 だから、まだ死んでるとは言えないわ」 悪魔が説明してくれた 「でも、さっき産声をあげる寸前とかなんとか…」 「タイミングは自分で選べるんだ。 別に、今じゃなくていい。 本当に死んでいいのか生まれていいのか君が自分で決めていいんだよ」 挨拶の子が真剣な表情でいう 「はぁ…」 横からため息、無表情の子 「早く私達と逝こう?」 無表情の子が私の腕を掴む 「どうして、私を連れていきたいの?」 私は、聞いてみた どうにかして私を連れていきたいんだろうと、そんな必死さが伝わる 「あちら側の方が、君には合ってると思うから」 無表情の子は言う 「つまらなかったんでしょ? 夢も希望もなんにも光はなかった。 なら、もう何も無いはずだよ。 死者の国は、つまらない」 無表情の子が口走る 「どうして、そう断言するの?」 「……関係ない」 無表情の子は口をぐっと閉ざす 「僕達も、死者の国を生きていたからね」 挨拶の子が代わりに答えてくれた
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