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「総連事務所とあるけど、どうしてあなたが?」
中西は不思議に感じた。
「5階6階は朝鮮総連で管理しています。それを5階が私共、6階はパチンコ屋さんが総連から借りています」
「そうですか、どうして看板をそのままに?」
この質問にRamが笑った。
「おまじないみたいなもんです。悪戯されないので」
確かに近寄りがたい看板である。Ramがドアを開けた。
「さあどうぞ、奥にオフィスがあるのでお待ちください。美味しいインドティー入れましょう」
その言葉に油断した。中西が入るとバンとドアが閉められ施錠された。
「やっちゃった」
ドアを蹴飛ばすが開かないことは分かっている。部屋の中を物色する。刺激臭がする。衣類の虫除けがあちこちに撒かれている。何の意味があるのだろうか。中西は奥の部屋に入った。窓はベニヤ板で塞がれている。大きなトランクが横たわっていた。動いた。
「誰かいるのか?」
中からトランクを叩いた。
「待て今開ける」
トランクはダイヤル錠で施錠されている。
「ちきしょう」
こじ開けられるものがないか探した。叩き潰したのでは中の生き物が死んでしまう恐れがある。
「助けて」
女のか細い声が聞こえた。
「当たり前だ。お前を助けるために来たんだ。もう少しだ頑張れ」
激励するが手立てがない。ダイヤル錠を見た。0.0.0.2.もしかしたらと0を四つ並べた。
「くそっ」
0001.開かない。0003.カチと音がした。
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