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「おう、早く開けろ、女子が脱水症状で苦しんでる」
「南京錠で開けられません。会社に寄りましたが鍵を管理している社長は出払っています」
「拳銃があるだろ。ここで使わずにどうする。いいか南京錠を撃っても駄目だぞ。鍵の留め金を見て、弱そうなとこを撃つんだ。弾の跳ね返りに気を付けろ」
「はい、離れていてください」
警官がホルダーから拳銃を抜いた。万が一のため跳ね返る方向を確認している。視線で弾の角度を追った。
「早くしろ」
中西の怒鳴り声が聞こえた。1メートル離れて2発連射した。破損した留め金を警棒で叩いた。南京錠が外れて床を滑った。その瞬間中西がドアを開けた。
「こっちだ。この子を病院に連れて行け。急げ」
中西は階段を駆け下りた。日印貿易興商のドアを開けて手帳を翳した。
「みんなこっちを見ろ」
手帳を左右に振る。
「警察だ、社長はどこに行った」
みんなが首を横に振る。
「社長宅の住所は?」
「渡しましたが」
「誰に?」
事務の女が指差した。階段を駆け下りるスイングトップのジャンパーが見えた。
「並木」
中西が追う。並木の走りは独楽鼠のようにすばしっこい。中西のトレンチコートが広がった。鷹が鼠を追うように二人が元町に向かい走る。
新潟駅に立つと例の弁当屋が売をしていた。
「ひとつもらおうかな」
徳田が注文した。
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