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「インド大使館ですか?まさかニーシャが逃げ込んですか?」
「ご存知ですかスカルノ・ニーシャを?」
「ええ、よく存じていますが彼女が何か?」
徳田はとぼけて訊いてみた。
「ちょっとこっちへ」
廊下の奥に移動した。
「坂本涼子達をパク・ユジンに紹介したのはスカルノ・ニーシャと内縁の夫であるラジェーシェ・ラムです。ラムは主に監禁に携わっていました。あのビルの5階がニーシャ達の監禁場所、そして6階がユジンが管理していた監禁場所です。あのビルは元々総連が購入したもので賃貸です。大岡興行の社長はニーシャ達とつるんでいたんです」
徳田の推測が並木の説明によって事実となった。
「それで彼等は?」
「大使館に、西が踏ん張ってますが、大使館には入れないでしょう。彼等はインドに帰国します」
「止められないんですか?」
並木が首を振った。
「止める気がないんですか?」
徳田が挑発した。
「あんたとは立場が違う。人殺しを含めた正義は有り得ない。そんなことをしているとあなた自身が誰かに裁かれるぞ」
並木が返した。
「ニーシャ達が犯した犯罪絡みで何人も死んでいる。騙されてウジ虫共の餌食になった女の子達は救われない」
「あいつ等を殺したところで元には戻らない。これから起きないようにするのが俺達の務めだ」
「違う、元に戻るんだ、少なくともあいつ等がいなくなることで一旦戻る。お膳に蠅がたかれば叩く。腸に蛆が湧けば掻きだして潰す。それだけのことだ。あいつ等はアゲハやカタツムリじゃない、蝿と蛆だ。貧乏人の飯を搔っ攫い
腸に巣作る輩だ。一度で反省する人間じゃない、繰り返し身体が朽ちるまで喰らい続ける妖怪だ。まあ公務員のあんたとやり合っても埒が明かない。インド大使館の住所を教えてくれ」
徳田は時計を見て言った。
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