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都橋探偵事情『更紗』
除雪車が雪を跳ね上げる。見るだけで凍えそうな新潟古町の繁華街にインド料理店がオープンした。インドならカレーとカレー好きが開店前に並ぶ。客は粉雪に震えながらも笑顔が見える。路の真ん中は除雪されるが両端は商店主が各々スコップで掻く。スコップがアスファルトを擦る音に歯が浮く。
「ねえ、カレー屋さんが出来たの、行ってみない?」
「行きたい、どこ?」
「古町」
「古町にはお父さんに行くなって言われてる。まっいいか」
誘ったのは岩下啓子、誘われたのは坂本涼子、地元県立高校の三年生である。
「並んでるよ。待つ?」
涼子が頷いた。小一時間待って店内に入る。インド料理はカレー以外に知識がない。周りの客が食べているのを覗き見しながら選んでいる。
「お決まりですか」
流暢な日本語を使うマダムが二人の席で微笑んだ。
「カレーライス」
「あたしも」
考えた末にカレーになった。
「きれいな服ね」
「インドの民族衣装かな」
二人はペロッと平らげた。美味い不味いではなく空腹を満たした。
「これ、開店祝いのサービスだから。お替り自由、ゆっくりしていってね」
マダムが二人にラッシーをサービスした。初めて飲むラッシー、カルピスを複雑にした味がした。
「お替りしちゃう?」
「恥ずかしい」
そう言いながら二杯ずつお替りした。マダムは心地よく受付けてくれる。客が退けてマダムも加わり話が弾んだ。横浜の本店を構えるこのインド料理屋が初めて地方に出店した。店の名はガンダーラ、マダムは開店するにあたり、シェフや店員に本店のサービスを教えていた。
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