どうすればよかったのか、未だにぼくにはわからない

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 数日後、僕たち家族は近所のホームセンター内のペットショップへと訪れていた。 ショーウィンドウの中の子犬達はどれも可愛い。どの子にしようか迷っていると、一匹の白い子犬と目が合った。その外見は全身の毛がフワフワモコモコとしており、耳掻きの梵天に手足がついて歩いているようであった。黒い部分は黒真珠のような目とトリュフのような鼻先のみ。  僕はそいつに運命を感じてしまった。そいつに指を差しながら、両親に向かって高らかに叫んだ。 「この子にする!」 両親もショーウィンドウの中の白い子犬をじっと眺めた。父は渋い顔をした。 「おい? これサモエドだろ? 今はちっちゃくて可愛いけど、大きくなるんだろ? ウチじゃ狭くて飼うのは無理だ」 サモエドと言えば超大型犬、僕の家は30坪程度の普通の一軒家である。 庭も猫の額程しかない。ちなみに賃貸の借家だ。 そんな家ではとてもではないが成長したサモエドを飼うことなど出来ない。 僕がそいつを諦めて別の犬を探そうとした瞬間、母がハッとして何かに気がついた顔をした。 「あら、この子サモエドじゃないわよ? スピッツよ」 「ああ、戦後の高度経済成長期にブームになったな。小さくてキャンキャン吠えるからってブーム去っちまったけどな」 「けど、白くてモコモコしているのが可愛いからって飼う人は多いのよね」 「ブームになった時の犬は庭に鎖で繋いで飼うのが普通だったからな。ストレスがかかってたんだろ。座敷飼いが主流の今ならあんまり吠えないんじゃないかな? 躾次第だけどな」 僕はそいつの犬種がスピッツであることを知った。気になったのは「小さくてキャンキャン吠える」と言う点だ。 「ねぇ、小さいってことは小型犬ってこと?」 「あなたの友達が飼ってるポメちゃんよりかは大きいけど、小型犬よ。柴犬よりかは一回りは小さいかな?」 「それじゃあ、ウチで飼えるの?」 「ええ、大丈夫よ」 「決めた! こいつにする!」 こうして、僕の家に犬がやって来たのだった。 名前は「ブラン」と名付けた。フランス語で「白」そのままだけど、カッコいいから僕は気に入った。命名は母で、その白い毛並みからインスピレーションを得て付けたとのことであった。 マイクロチップの埋め込みやワクチン接種等諸々あり、ブランが家に来るまでは日数がかかるとのこと。 僕はその数日間、首を長くして待つのであった。
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