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「自己主張をしたことのなかった花保が惚れちまったって言うのなら、そんなの俺がどうこうできるもんじゃないしなぁ〜」
「お兄ちゃん……」
突然のくだけた口調に花保と怜士がポカンとしていると、和人がテーブルの上で指を組んで身を乗り出した。
「花保、おまえは正志くんと離婚したいか」
泥沼になるかもしれないし長期戦になる可能性もある。それでも挫けずに戦い続ける意志はあるのか……と真っすぐ見据えられた。
――離婚……。
誰かと戦うだとか争うとか、自分の人生には無縁だと思っていた。
今だってできることならそんなことはしたくない。
――けれど……。
花保は隣の怜士をチラリと見やる。
――このまますべてを諦めたまま死んだように生きるくらいなら、怖くても新しい道に進みたい。
「離婚……したい、です」
「……そうか」
和人は次に怜士を見た。
「天宮くん、君は花保と結婚したいか」
「したいです!」
「えっ、嘘っ!」
前のめりな答えに花保が目を見開く。
しかし男性二人は花保を無視して会話を続けていく。
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