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「会長は部下にパワハラするような方じゃないよ。僕は嫌ならハッキリそう言って断るし、ここには自分の意志で来たんだ」
「でも……」
「それで、やっぱり僕は不合格?」
「不合格だなんて!」
彼はハンサムだし、話した感じでは誠実そうだ。父が認めたのであれば仕事もできるに違いない。
「僕は花保さんの父親思いで優しいところが素敵だと思うし、あなたさえよければ結婚を前提としたお付き合いをしたいと思っている。花保さんは?」
「私は……」
花保はチロリと正志の顔をうかがい考える。
会長と社長の身内という以外これといった取り柄のない自分を好きになってもらえるのだろうか。
「私なんかが相手でいいんですか?」
「あなたが僕なんかでよければ」
正志がニコリと微笑み右手を差し出してきた。
その手を見つめて最後の葛藤をする花保に正志が最後のダメ押しをする。
「会長は自分が生きているうちに花保さんの花嫁姿を見たいとおっしゃっていた。僕たちが付き合うことになれば、きっと喜んでくれるはずだ」
その言葉を聞いて決意が固まった。
――そうだ、これから好きになってもらえるよう頑張ればいいんだ。
花保はコクリとうなずくと正志の手を握り返す。
「……よろしくお願いします」
「こちらこそ、これからよろしくお願いします」
正志の爽やかな笑顔に頬を赤らめつつ、花保ははじめての恋と幸せの予感に胸をときめかせたのだった。
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