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8、初恋のやり直しをしよう
三ヶ月後。
新築のマンションで花保が荷解きをしていると、書斎から怜士が本を片手にひょっこりと顔を出した。
「花保、これも俺の本棚に一緒に並べちゃっていいの?」
「えっ、ちょっと見せて」
怜士が手にしているのは先月発売された彼の新刊『花開く君に』だ。
間宮ほのかのデビュー作『花薫る君に』の続編と言われている作品で、刊行直後から大ヒットとなり早くも歴史ある文学賞の大賞候補と噂されている。
「俺が既に献本を五冊持ってるから、花保のも足したら六冊になっちゃうんだけど」
「よかったら先輩の本と一緒に並べてほしいな」
これは怜士と会えなかった実家暮らしのあいだに花保が本屋で買って読んでいたものだ。
ほかにも花保が所有している『間宮ほのか作品』はたくさんあるが、全部ファンとして購入した大切な宝物。できればこのまま持っていたいと思う。
「そうか、わかった」
怜士は笑顔で花保の肩を抱き寄せる。
チュッとキスして見つめ合い、今度は舌を絡めた濃厚な口づけを交わす。
花保が正志と離婚して三ヶ月が経った。
正志の裏切りを知った和人が正志に退職を勧告。正志はそれに異議を唱えることなく会社を去り、姿を消した。
彼が今どこで何をしているのか花保は知らない。
和人からは離婚後も三ヶ月は絶対に怜士と会うなと釘を刺され、二人はそれを真面目に守り通した。
そのあいだ顔を見ることはできなかったけれど、メールや電話ができるだけでも花保は嬉しかった。
正志との結婚生活では一緒にいたのに常に寂しく感じたものだ。
けれど怜士はいつも優しい言葉をくれる。日々の出来事を語り合い、気持ちを共有してくれる。
だから離れていても心が満たされ不安にならずにいられたのだ。
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