8、初恋のやり直しをしよう

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 そのあいだ、怜士と生きていくための心構えもできた。  父や兄の秘書となるべくいくつかの資格を取っていた花保なのだが、怜士の執筆活動のサポートをしたいと考え校正技能検定の中級を取得。  近いうちに上級も取得したいと考えている。  とうとう交際の許可がおりたのが二週間前。  怜士が臼井家を訪れ、改めて和人に挨拶をしてくれたのだ。  そこでの話し合いで、まずは同棲生活を開始して、落ち着いたら入籍することが決まった。  会えないあいだに怜士は和人と頻繁に連絡を取っていたようで、花保と住む新居についても相談していたらしい。 『松濤の実家から近く、セキュリティが万全で買い物にも便利な場所』  という和人からの条件を叶えるべく怜士が探したのが同じ渋谷区内のこのマンションだ。  ――だからって新築マンションを購入してしまうとは思わなかったけれど。 「――ねえ、本当に兄の条件を呑んでしまってよかったの?」  唇が離れたところで花保が怜士に問いかけた。  前のアパートには作家デビューをする前から住んでいたと聞いている。  思い入れのある場所を離れるだけでなく、しかも今度は分譲マンション購入だ。無理をしていないかと心配になる。  怜士がふわりと微笑んで、コツンと額をくっつけた。 「前にも言っただろう? 俺がそうしたかったんだ。以前から編集さんに引っ越せって言われてたし」  担当編集からはもっと広くて出版社に近いアパートかマンションへの引っ越しを勧められていたのだという。 「有名人になったんだからセキュリティにも気をつけたほうがいいって言われてたんだけど、どうにも面倒で。けれどいいきっかけができてよかったよ」  至近距離から笑顔で言われてしまえばもう言うことはない。
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