8、初恋のやり直しをしよう

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「わかった。いろいろ準備してくれてありがとう。迎えにきてくれて嬉しかった」  花保の言葉に怜士の瞳が熱を持つ。 「俺こそ一緒に住む決心をしてくれてありがとう。だからそろそろ名前を呼んでくれないかな」  ――あっ!  いつかの彼の言葉が蘇る。 『今はまだ先輩のままでいい。けれどいつか花保の決心がついたそのときには、『怜士』と呼んでもらえたらと思う』  ――あの頃はまさか本当にそうなるとは思っていなかったけれど……。 「……怜士、あの日、私を救ってくれてありがとう」  耳元でそっと囁くと、間髪を入れずに抱きしめられた。 「俺のほうこそ……勇気を出してくれて、ありがとう。俺は幸せものだ……」  ――そんなの、私のほうこそ……。  結婚前は夢見ていた。  いい奥さんになりたい。お互いを思いやる温かい家庭を築き、その先には穏やかで優しい未来が続いていて……だなんて。  残念ながら最初の結婚ではそれが叶わなかったけれど、今目の前には疑うことのない『愛』がある。   「朝起きて隣に花保がいて、笑顔で『おはよう』って言ってくれて。寝る前に『おやすみ』って言ってくれれば、それでもう十分……あっ」  怜士がそこまで告げたところで言葉を途切れさせた。 「どうしたの?」  花保が瞳をのぞき込むと、怜士が顔を赤らめつつ遠慮がちに口を開く。 「いや、花保がいてくれれば十分なんだけど……でも、ぜんぶ俺のものにできたらな……って」 「ぜんぶ……」  言葉の意味を察した花保も赤くなる。 「……駄目かな」 「駄目じゃない……よ」 「寝室に行く?」 「……はい」  手を引かれ、二人でベッドルームへと向かう。  昼間の光がカーテン越しに差し込む部屋の中、花保はダブルベッドにゆっくりと身体を横たえられた。
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