8、初恋のやり直しをしよう

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 カーテンから薄明かりのさす寝室で、花保は喜びの声をあげている。 「あっ、やぁっ!」  怜士の愛撫は執拗だ。長く甘いキスのあとは耳や鎖骨、手の指にいたるまで丁寧に舌を這わせている。  胸の先端を(いじ)られて、喉を晒して嬌声をあげた。  ――こんなのはじめて……!  正志にはこんなふうにされなかった。まだ濡れてもいない秘部に挿入されて、ただ痛みに耐えるだけの行為。  なのに怜士は……。 「花保、舐めてもいい?」 「えっ、舐める?」  意味がわからず首を傾げると、股を大きく開かれた。  驚いているあいだに怜士の顔が沈んでいく。  ――嘘っ!? 「やっ! そんなところ、駄目っ!」  必死で腰を捻って抵抗すると、怜士が不思議そうに顔を上げる。 「もしかして……舐められたことないの?」 「そんなことあるはずない! 汚いから、早く顔を離して!」  花保が必死に叫んでいるのに対して怜士のほうは嬉しげだ。  目をキラキラと輝かせてうわずった声を出す。 「それじゃあ……ここはまだ誰にも舐めさせていないんだね」 「そんなの、当たり前だし……」 「嬉しいよ、丁寧にする」 「えっ、嘘っ! ああっ!」  身も心もトロトロに蕩けきった頃、とうとう二人は一つになった。  生まれてはじめての愛ある行為の快感に身悶える。  同時に達し、怜士にきつく抱きしめられる。 「しあわせ……」  吐息とともに呟くと、怜士もコクリとうなずいた。 「うん、やっとだな……」 「えっ?」 「十年越しで俺の初恋が実った」  彼の言葉に瞳が潤む。  ――うん、私も……。 「私の初恋も……十年越しで実ったんだよ」 「それじゃあ十年分愛しあわなくちゃな」  見つめ合ってキスをして、互いの舌と脚を絡めあう。  再びきつく抱き合うと、すぐに寝室が甘い吐息で満たされるのだった。 Fin
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