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こんなにも体力は無くなるものなのか。高校時代、陸上で鍛え上げた身体は一体何処へ行ってしまったのだろう。
私はいつも人に良い顔をしてばかりいて、人生においても常に置いてけぼりを食らっている。同僚達は皆出世し、うだつの上がらない独身の万年平社員のまま、気が付けば四十を越えてしまった。この年齢で外回りをしている者など、社内にはもう私の他に誰もいなかった。
次のバスまで仕方なく待とうと待合所の椅子に腰掛けようとすると、椅子に座る仙人のような長い白髭を蓄えた老人が目に入った。
左目は義眼なのだろう。辻褄の合わない目線の片方だけを私に向けた老人が手招きし、隣の椅子を二度叩いた。ここへ来い、という意味だろうか。
上る息を抑えながら腰を下ろし、老人に会釈する。
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