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恐ろしいような、信じられないような、何と表現したらいいのか分からない気持ちのまま食卓に着き、死んだはずの父とまだ若い母の会話を懐かしい味のする味噌汁をすすりながら聞いていた。
「このオウムって教団はなんだ。まるで殺人集団じゃないか」
「ほら、谷津さんの息子さんいるでしょ? オウムなんじゃないかって噂よ……」
「うむ。そういう噂をやたら信じてはいけないが、用心するに越したことはないな」
私は目の前の景色の何もかもが信じられないまま、学校へと足を運んだ。
まだ禿げていない旧友の姿や、後に逮捕された担任が教鞭に立っている。そして今ではスナックを営んでいるというクラスのマドンナ・木下聖子さんも輝くようなフレッシュな笑顔で目の前に存在していた。
どうやら全てが本物らしい。
そう確信した私は全てをやり直せることへの喜び、熱意で胸を躍らせた。
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