時の粒

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 在学中に不出来だった勉強も、後に学んだ学習法のおかげで難なく優秀な成績を収め、当時は長距離の補欠選手に過ぎなかった陸上も、最新のスポーツ理論を駆使したおかげで県大会出場を決めた。  何もかもが上手く運び、木下聖子と付き合うことまで出来た。  当時の反省を活かした訳ではない。何かに失敗する度、私は胸ポケットに入っている砂粒を落とし続けただけなのだ。    大学に入る頃には競馬にのめり込んだ。レース結果を見届け、少量の砂粒を地面に落とす。これを何度も繰り返している内に、私は見る見るうちに大金持ちになった。  大学卒業後は起業し、後にブームとなる商品や商材を誰よりも早く世に広めた。経済誌には私の特集記事が毎号のように組まれ、新進気鋭の鬼才とまで呼ばれるようになった。
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