僕が会いたい人

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 僕は趣味でよく古本屋へ行く。別に文学に興味があるわけではない。僕が好きなのはアイドル雑誌だ。それも今のものではなく、昭和のアイドル雑誌なのだ。  ほんとうに古き良き時代というか、あの頃のアイドルは純粋でとても可愛いと思う。  なかでも僕は特に好きな女性アイドルがいる。  今日も古本屋で雑誌を見つけてしまった。僕が大好きなアイドルが表紙になっている雑誌。少々高い値がついてるが我慢できずに買ってしまった。  家へ帰ると母が夕食の準備をしていた。  僕がリビングに座って雑誌を見ていると、母が声をかけてくる。 「また買ってきたの?」 「いいじゃん、好きなんだから」  母はふ〜ん、という顔をしていた。 「その頃ね、モテたのよ、一緒に歌番組に出てた男の子から。こっそり電話番号交換したりラブレターもらったりね」 「よくバレなかったね」 「おおらかだったからね、その頃は」  僕もまた、ふ〜んと思う。  僕はこの雑誌の表紙を飾るアイドルに会いたい。タイムトラベルできるなら絶対会いに行きたい。  今僕の目の前にいる母親でなく、17歳のピチピチと光り輝いていた頃のあなたに会いたいのだ。                THE END
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