センシティブ青年

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 この世は全て幻想。そして、死ぬまでの暇潰し。  そう思えば周りと自分を比べることを自然としなくなり、人に対して淡々と接するのが当たり前になった。  その日、船崎青年は派遣会社から紹介された現場へたった一人で向かっていた。都心から遠く離れた山間の駅で降り、指示された場所へ歩いて行くと小さな公民館のような建物にたどり着いた。  何をやるのか具体的には聞かされておらず、指定された持ち物の軍手とカッターだけもう一度確かめると、建物の中へ足を踏み入れた。  明かりがなく薄暗い屋内、その玄関右手には事務所だろうか、扉があった。その中から人の笑い声が聞こえて来たので、船崎青年はとりあえず中へ入ってみることにした。  ドアを開けた先には茶色に頭を染めた職人風の若者が二人、がらんどうの部屋でパイプ椅子に腰掛けて煙草を吸いながら談笑していた。片方の男には顎髭が生えていたが、もう片方の男には髭がなかった。しかし、二人とも肌を焼いていて、やたら色が黒かった。船崎青年は軽く頭を下げ、挨拶した。
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