センシティブ青年

3/10
前へ
/10ページ
次へ
「グローチャンスから派遣されて来ました、船崎です。あの、こちらのお部屋でよろしかったでしょうか?」  互いに顔を見合わせた職人だったが、煙草を揉み消しながら顎髭が船崎青年の問いに対し、問いで応えた。 「いくつ?」  船崎青年は派遣経験から服のサイズを聞かれているのだと思い、「170のMです」と答えると、顎髭が掠れた笑い声を漏らした。 「あんた、バケモンかよ。年だよ、いくつ?」 「年齢ですか?」 「そうだよ。いくつ?」 「今年、三十になります」 「へぇ、俺らの五個上なんだ。どっから来たの?」 「あの、それは今日の仕事となんの関係がありますか?」  船崎青年は大真面目に訊ねたのだが、職人二人は顔を見合わせると、一呼吸置いてから盛大な笑い声を狭い部屋の中で響かせた。 「おいおいおい! やべーよコイツ!」 「話し通じてますかー? おはなし、出来ますかー?」 「おじさん、冗談は年だけにしてくれよ! マジ勘弁だわぁ。で、どっから来たの?」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加