センシティブ青年

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「おじさんは家族とかいないの?」 「両親と、兄がいますけど」 「まさか、実家?」 「はい」  髭なしは乾いた笑い声を鼻で漏らすと、「俺、嫁と二人。もちろん、マイホームだけど」そう言って勝ち誇ったような笑みを浮かべる。その様子に顎髭は「こいつ、性格悪いだろ? 気にすんなよ」と一応は船崎青年にフォローを入れたものの、内心人を小馬鹿にしているような笑みを船崎青年は感じ取った。だが散々見慣れ過ぎていた笑みだったので、それにもやはり何の感想も持たなかった。  それから一時間が過ぎてもトラックがやって来る気配もなく、暇を持て余した三人は連れ立って公民館の外へ出た。玄関の外は緑の山々に囲まれており、目の前を通る小さな道路の他、鳥の声と湿った緑の匂いが辺り一帯を包んでいるだけであった。店もなければ、自動販売機の一台すらもない。  顎髭が欠伸をしながら「こりゃ事故ったかな」と漏らすと、髭なしが辺りをウロウロし始める。船崎青年は長閑な風景に身を任せ、放心状態で景色の中へと意識ごと溶けていた。
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