センシティブ青年

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 船崎青年は今年三十歳を迎えるが、これといってやりたい事や目標などもなく、おまけに実家暮らしであり、ただ寿命が来て命が終わるのを待つだけの日常を生きている。  定職にも就かず、気まぐれ程度に登録している派遣会社から紹介される仕事へ月に十日程度出るだけで、社会に対しての自分の役割だとか、存在意義だとか、そういったものも全て人が作り出した「幻想」だと信じていた。それもこれも小さな頃、熱心に観入っていた教育番組を父親が指差し、 「これな、全部作りモンなんだぞ。ぜーんぶ、嘘っこ。ニセモノなんだ。おまえ、騙されてるんだよ」  と気まぐれに茶々を入れたのがキッカケであり、その瞬間から教育テレビに熱を入れることを辞めてしまった。その癖は小学校へ上がっても、中学校、はたまた高校へ上がっても変わることなく船崎少年に根付いてしまい、大人になってもそれは変わることはなかった。
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