駅蕎麦の末路

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『今週いっぱいでここを終わりにします。長年お世話になりました』  唖然としてしまった。幾ら何でも急過ぎると思ったが、女性の年齢を考えればこれもやむを得ないことなのだろうかと一旦、思考が立ち止まる。これから先、こんな風にして消えてしまう店が増えそうだ。  私はいつも通りに朝食代わりのたぬき温蕎麦を注文する。 「はい」  と無愛想に応え、提供の準備に取り掛かる彼女は今、どんな気持ちなのだろう。もっと、ここで店を続けたかったのだろうか。それとも、体力の限界を感じたのだろうか。または、やるべきことをやり切ったような心持ちなのだろうか。  何となしに眺める目線の先には、湯気が立ち昇る大きな鍋の中へ蕎麦を入れる皺だらけの生きた指先が映っている。私はその瞬間、ここへ通って以降初めて彼女に声を掛けてみることを決心した。
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