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 土井寝食(どいねるく)は木々の間に身を潜めながら、このゲームを生き残るために必要な「共闘者」を探していた。  一人で戦うのもいいが、相手は自分と同じ怠け者たち。少しでも楽をするため、残り少人数になるまでは参加者同士での共闘を必ず考えるはずだ(現に自分も考えたのだから)。  寝食はなんとかしてゲームに優勝したかった。  すねをかじられることに拒絶を示し始めた両親。一族の恥に向けられる親戚たちの冷たい視線。福祉サービスの人さえ彼をまるで腫物のように扱う。  そんな面倒な現実から抜け出すための、これは大きなチャンスなのだ。  周囲を窺いながらゆっくり歩いていると、突如、緊張感をぶち壊す間抜けなイビキが聞こえてきた。出所は目の前の大岩の裏のようだ。  岩陰からそっと覗き見ると男が一人、無防備にも大の字に寝転がって鼻提灯を作っていた。顔のパーツだけ見れば塩顔のイケメンだが、素材を台無しにするほどの圧倒的な不潔感は間違いなく一流の怠け者のそれだ。  寝食は無造作に伸びた顎髭をポリポリとかいて考える。  この男は、確か。 「おい、起きろお前。無警戒すぎだろ」  男は鼻提灯を割り、フゴッと声を上げた。キョロキョロと周囲を見渡し、寝食と目が合った後、再び眠りにつこうと目を閉じた。 「寝るな寝るな! なんだお前、どんだけ怠惰なんだ!」 「なんだよ……気持ち良く寝てたのに」 「戦いの最中だぞ!? 俺が襲いかかってたら、お前もうやられてるぞ」 「何? 君もバトルの参加者なの?」 「そうだ。てかお前、ポケットの中に能力の説明書入ってないって騒いでたやつだろ?」 「あー、うん、そうだよ……おやすみ」 「だーから寝るなって!!」  寝食は初めて見る自分より怠惰な存在に愕然とし、再び顎髭をポリポリとかいた。
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