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 それからいろいろあり(面倒臭いので割愛)、彼らは共闘することになった。 「俺の名前は土井寝食。よろしくな」 「ネルクね。長いからネルって呼んでいい?」 「長い? ……まぁ、好きにしろ。で、お前の名前は?」 「相楽怠造(さがらたいぞう)。長いから、皆からはクズって呼ばれてるよ」 「それ長さの問題じゃなくね……」  怠造は怠惰だが、悪い奴ではなさそうだった。いきなり裏切って攻撃したりはしてこないだろうから、仲間にするには申し分ない。  ただ。 「怠造は結局まだ、自分の授かった能力が分からないんだよな?」 「うん」 「じゃあまず、それを探すところからだな」  能力が分からないことには戦いようがない。  寝食は「見てろ」と言い、集中するように目を閉じた。しばらくすると、彼の長く伸びた顎髭が一段と長く伸び、意志を持ったようにウネウネと動き始める。  これは、と怠造が驚きの声を上げた。 「俺の能力だ。《自在の無精髭(transform beard)》」 「何その名前。説明書に書いてあったの?」 「いや、自分で考えた」 「うわぁ……」 「と、とにかく。能力にはそれぞれの司る『怠惰の形』が関係している。と、説明書に書いてあった」 「怠惰の形?」 「俺は髭を剃るのが面倒で、基本的に月一回しか剃ることはない。この伸び放題の無精髭が俺の怠惰の形であり、それがそのまま能力の素体となっているんだ」 「あぁ、なるほど。つまり俺の怠惰の形が何か分かれば、能力発動に繋がるかもしれないのか」 「そういうことだ」  怠惰の形かぁ、と怠造は首を傾げ眉間に皺を寄せる。  その時。不意に近くの藪がガサガサと揺れ、中から黒い影が飛び出した。怠造に向けてちょっと早めの早歩きぐらいのスピードで突進を始めたその影に対し、寝食は緩慢な動作で二人の間に割り込み、無精髭を盾のように丸く広げる。盾が影の攻撃を辛うじて弾いた。 「ほう。怠け者にしては良い動きだな」  影の正体——全身黒ずくめの痩せぎす男が、二人の前に仁王立ちして言った。 「だ、誰だ!」 「俺の名は赤木良介。お前らと同じ、ゲームの参加者さ」  赤木が胸を張ると同時に、とんでもない悪臭が二人の鼻をつんざいた。
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