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「ねえ、ケイトの“ウチ”ってどの辺り?」
ミドリが尋ねるので、ケイトは、だいたいの辺りを指さした。
「40階だから、あの辺かな?」
「わあ、いいなあ。今度、遊びに行っていい?」
「いいけど……」
ミドリの母が部屋まで運んできてくれた緑茶とサラダせんべいを口にしながら、パパやママがいないから、ミドリが来ても、こんなおもてなしができないそうにないと、ケイトは思った。
*
ケイトは玄関の扉を合鍵で開けて入ると、空気がひんやりと感じた。
ママはまだ帰っていない。
今日はケイトの誕生日だけど、そのことを忘れているわけではないと思う。
小学校6年のときの誕生日は、学習塾があって、きちんと祝うことができなかった。
祖母がケイトのためにバースデーケーキを用意してくれたが、昔のようにみんながテーブルに集まって、蠟燭を吹き消すようなイベントはもう行うことはなかった。
塾から帰ると、父も母もまだ帰っておらず、祖父母がケーキの傍でニコニコしながら待っていた。
「ケイトちゃん、こっちに来て、さあ、さあ」
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