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さすがに捨てることはなかったが、箪笥の中に仕舞いっぱなしで、一度も使ったことはなかった。
ある日ケイトは、外に出かけるときに、別の手袋をしている自分の手元を、祖母の視線がちらちらと、追いかけてくるのを感じた。
もし何か言われたら、「だってあの“手袋”だと、指が出せなくて、スマホが弄(いじ)れないもん」という言い訳を考えていたが、それについて祖母から言葉を発してくることはなかった。
その数日後、祖母は体調を崩して入院し、二度とこの家に戻ることはなかった。
それ以来、ケイトは寒い日が来ると、祖父母からもらったミトンを使うようになった。
「その手袋、可愛いね」
ミドリがケイトの手元に気づいて言った。
「やっぱり、変だよね、でも、これ、おばあちゃんからのプレゼントなんだ」
「変じゃないよ、ケイトらしくて可愛いじゃん」
あの時の自分は、可愛いものが妙に子供っぽいと思って、素直に可愛いと言えなかった。
今は、ちゃんと可愛いものを可愛いと思える。反対にあの時の自分の方が子供だったのかもしれない。
「今年は、もう誕生祝いはしなくていいから」
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