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昨年までぴったりだった手袋は、何度か洗って縮んだせいも多少はあるけれど、自分の手が大きくなったのか、サイズが合わなくなってきている。
ミトンから少しはみ出した手のひらを眺めて、クスクス笑っていると、ベランダに面したガラス戸が「コンコン」と音を立てて鳴ったので、ケイトは、ドキッとした。
気のせいかと思って、カーテンが引かれたガラス戸の方を振り向くと、再び「コンコン」と音がした。
誰かがガラスをノックしているような音だ。
「ねえ、ちょっとこの扉、開けてちょうだい」
くぐもった女性の声がした。
ケイトは、すぐさま“泥棒だ”と思ったが、すぐに思い直した。
(女性の泥棒? だって、ここは高層マンションの40階よ?
どうやってここまで登ってきたの?)
「ねえ、お願い。ちょっと、あなた、アサブキ・ケイトちゃんでしょう?」
自分の名前を呼ぶ女性の声が、カーテンの向こうから聞こえた。
「大丈夫、私は怪しいものじゃありませんよ」
ケイトは恐る恐る、カーテンが引かれたガラス戸の方に近づいて行った。
カーテンをそっと開けると、そこには黒づくめの女性の姿があった。
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