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父は、いずれ、都心から離れた緑豊かな環境の下に、一軒家を構えたいと考えていたが、母に押し切られる形で、勤め先にも近いということから、かつては下町として栄え、現在は再開発が進む臨海副都心の一角にある高層マンションを購入することにした。
ケイトとしては、引っ越しすることで学区が変わり、仲の良かった小学校の同級生と離れ離れになるのは、ちょっと辛かった。
でも、新しい友達と知り合えるのは、不安な反面、楽しみでもあった。
よく一緒に下校するミドリとは、中学に入ってからのクラスメイトですぐに仲良くなった。
ミドリの家は、この町に古くからある商店街で乾物屋を営んでいて、二つ下の弟がいた。町の少年サッカーチームに入っているそうで、やんちゃそうな少年だった。
「サトシ、あんた、またジャージ脱ぎっぱなしで風呂場に置いといたでしょ。きちんと畳んで置きなさいっていったじゃない」
ミドリの家に遊びにいったとき、ミドリがまるで母親のように小言を言うのを聞いて、一人っ子のケイトは羨ましいと思った。
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