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「えっ? 魔法以外の授業もあるの?」
初日はカリキュラムや教材が配られて解散になった。
お金持ちのコミュニティは入学祝いパーティを行っているようだったけど、アウラたちは呼ばれていない。
魔法学校について詳しくないアウラはカリキュラムを見てびっくりした。
「そりゃあるよー。魔法学校といっても、魔法騎士を育成してるんだからね」
チャロは続けて言う。
「授業は座学と実技が半々くらいかな。騎士だからもちろん剣技を学んで、体力もつけないといけないんだ。アウラちゃんは体動かすの苦手? あたしは見ての通り、全然ダメ」
「そっか……。私も苦手かも」
アウラは農作業をしたり野山を駆け回ったりするのは好きだったけど、他の子よりも足が遅くて、すぐに息切れした。
魔法騎士に復讐するため、その懐に入り、魔法を学ぼうと思ったものの、魔法騎士の技を習得するには骨が折れそうだった。貧弱な自分の体を恨みたくなる。
「ベルタちゃんは得意そうだよね! 体、むっきむきだもん!」
「俺? 俺は別にそんなことない……」
鍛え上げた自慢の体なのかと思ったら、ベルタは顔を曇らせる。
「そうなの? ベルタちゃん、体を動かすの得意そうなのに」
「得意っちゃ得意だけど、人に誇れるようなもんじゃないよ」
「そっかー。上には上がいるもんね。でもベルタちゃんなら、きっとクラスで一番になれるよ!」
「……ああ、そうだな。そのためにここに来たんだから、頑張るよ」
アウラはベルタの謙遜があまり好きになれなかった。そんな恵まれた体を持っていて、どうしてそんなことを言うんだろうと。
「魔法は? 魔法は得意なの?」
ついベルタに問い詰めるように聞いてしまう。
「魔法は……」
ベルタは言いよどみ、少ししてからまた口を開いた。
「実はほとんど素人。ちょっと魔法の才能があったぐらいで、ほとんどやったことないんだ」
苦笑しながら言う。
素直にネガティブなことを打ち明けられて、アウラは少し申し訳なく思ってしまう。会って一日の人にさせることじゃない。
「……ごめん。実は私もからっきし……」
「気にすることじゃないよ。この学校に入るのはいろんな奴ばかりだからな。でも、入学試験をパスしたんだから条件は一緒さ」
「そうだね……」
気が逸り、ルームメイトにトゲのあることを言ってしまったことを悔やむばかりだった。
ベルタとチャロは敵じゃない。自分が強くなるためにも、一緒に切磋琢磨する仲間だとようやく気付いた。
「剣と魔法、両方やんないといけないか……。頑張らないと……」
魔法はあくまでも実際の行動を補助するもので、たとえば剣だったら、振ったときにその肉体的な強さに加えて、魔法の威力が上乗せになる。剣の硬さや鋭さ、長さをアップできるし、衝撃波を出すことだってできる。
それにそもそも剣が当たらなかったら魔法も外れちゃうから、ちゃんと剣の技術も必要だった。
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