返事は二万年後でいい

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「聞こえてたんだ?」 「嫌、聞こえるに決まってるだろ。この至近距離で爺さんじゃないんだから」 「良かった。俺のこと憶えてる?」 「嫌、全然」 「そう。別に憶えてなくてもいいよ」 「は?」 「どうせこれからずっと一緒だし」 「ごめん。どういう意味?」 「そのまんまの意味だよ。俺達は夫婦なんだ。前世も現世も来世も、そのまた来世も」 「えー」 「その顔面白い」 「顔ちっとも笑ってねぇじゃん」 「こういう顔なんだよ。今生では体に気を付けて二人で長生きしたいね」 こんじょうってなんですか、根性なら知っています。 今生なら知りたくありません。 紺青はいいと思います、青色は好きです。 「嫌もうツッコミどころありすぎて、どっから突っ込んでいいかわからん」 「その口調昔みたいだね。昨日まであんなによそよそしかったのに」 「えーっと、マジで言ってんだよね?」 「当たり前だろ。俺が冗談を言うとでも?」 「言わんな。言わん。そういうことをする人間じゃない。仲良くなくたってそれくらいわかる」 だからこれは本気でこいつにとっては本当だ。 「一応確認しとくけど」 「うん」 「俺男だよ」 「知ってるよ、今更だろ」 今更の使い方ってそれで合ってましたっけ? 学年トップが言うんだから合ってんだろな。 合ってて欲しくないけど、だってその使い方は前もこういうやり取りしたってことになりますかいね? あー、たーすけてー。 誰でもいいからこの空間破壊してー。 「お前も男だよな?」 「ああ」 男装女子。 一縷の望みにかけてみるがそう甘いことはなかった。 うん、知ってた。 「前世ではどっちが女だったの?」 何聞いちゃってんの俺。 これじゃああれじゃん、夫婦だったこと認めちゃったじゃん。 よくないってそういうの。 ホント流されやすいんだからー。 「どっちも男だったよ」 あっそー。 聞くんじゃなかったー。 「もう帰っていいか?」 「うん。今日の所はこれくらいにしておこう」 「何それ怖ぇんだけど」 ふふふって、何その笑い方。 はいはい、優雅ですねー。 お前が優勝だよ。 取りあえず家に帰って思い切り食って寝る。 そしたら全部夢だったことになるはずだ。 だってこんな展開有り得ない。 俺の人生に高身長、眉目秀麗、文武両道、人格良しなんていうピラミッドの頂点みたいなキャラが存在するわけがない。 したとしても俺の人生をただ通過していくだけだ。 これは夢、夢なんだ。 だから俺がしなくちゃいけなのは、目を覚ますこと、それだけなんだ。
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