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出逢い
「俺の女になにしとんって」
そう言って謎の男が凄む。
「チックソ」
「…彼氏持ちかよ」
捨て台詞を吐いて、男たちは去っていった。
「あの、あなたは………?」
急に現れた謎の男に警戒しつつも話しかける。
「俺?俺は…東雲凪や。お嬢ちゃんは?」
凪は微笑を浮かべ瑠璃の質問に答えた。先ほどのことで警戒心は解けずにいるものの、悪い人ではないだろうと安堵する。
「如月瑠璃です。あの、先程はありがとうございました。」
「おん、別に気にせんでええで。ここらには品も礼儀もない輩もようけおるさかい気ぃ付けなぁ。」
「分かりました。では…私はこれで…」
そういって、瑠璃は歩き始めようとする。
「ちょい待ちや、瑠璃ちゃん迷子やったんちゃうん?どこ行きたいん?送ったるで」
「…!」
怖い人たちもいるが親切な人もいるらしい。正直このあとどこに行ったらいいか分からなく、途方に暮れていた。
「(ちょっとぐらい甘えても…いいよね?)」
「ここのスーパーマーケットに行きたいんです。でも場所が分からなくて…」
「そんなら瑠璃ちゃんは反対方向にあるいてきてしもたんやなぁ。瑠璃ちゃんここの人じゃないやろ?」
図星を指された質問に思わず身をよじる。
「えっどうしてわかったんですか?」
「そこはここらでは有名なスーパーやから聞いてくる奴なんか居らんし、何より瑠璃ちゃん全然なまってないやん笑」
そんな他愛もない会話をしながらスーパーに向かう。
「ところで瑠璃ちゃん、悩み事でもあるん?」
この人はエスパーかなにかなのだろうか。先ほどから的を得た発言ばかりである。
「えっなんでですか?」
「気づいてないん?自分さっきからため息ばっかやで?」
「…私高校卒業したら、結婚させられるんですよね、好きでもない相手と」
…自分は初対面の相手に何を言っているんだ、とはっとして口を噤もうとした
が時すでに遅し。
「ってことは瑠璃ちゃんお見合い結婚するん?」
勘のいいこの男は嘘をついたところで騙せないと観念し、口を開く。
「そうです。三年後結婚しないといけないなら、今くらい自由にさせてくれって無理を言って京都にきたんです。」
…自分の口の軽さに驚きつつも話す。
「じゃあ瑠璃ちゃんは三年後誰かのお嫁さんになんねんなぁ」
と凪がしみじみとつぶやく。が、それに反抗するようにまた瑠璃が声を上げる。
「まさか!親の目が届かないところまで来たのは自分の愛する殿方を見つけるなり行方をくらますなりなんなりして婚約破棄させようとしてるからで…あ」
ペラペラと話してしまう自分に嫌気がさす。誰にも話さないようにと心の中にしまっていた計画をこんなにもあっさり言ってしまうなんて…
凪は一瞬目を見開いたが、すぐに真剣な表情になって瑠璃を見つめる。
「瑠璃ちゃんが好きな人ができたらお見合い結婚せんでええの?」
凪の問いかけに瑠璃は目をぱちぱちとさせる。なぜそこに食いついたのか意味が分からない。
「?えっとまぁ父にはそう言われてますけど……」
瑠璃がそう言うと凪はこちらに向き直る。
「瑠璃ちゃん……俺と付きおうてくれへん?」
「…………へ?」
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