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「そ、そうなの?」
「だって、サクラはそういう冗談を言うタイプじゃないじゃん。ってことは、マジなんでしょ?」
「信じてくれてたんだ。その割には、反応薄くない……?」
「別に。いつもこんなもんだよ、私は」
言い終わると同時に、ファーストドリンクである生ビールをやっつけ、すぐさま店員呼び出しボタンを押した。
いつも通り、ここからはハイボールタイムに入るのだろう。
そういえば、妃花がびっくりしているところなんて見たことがないかも。
相変わらずクールな子だ。
店員が駆けつける様子を見ながら、ポツリと妃花が言う。
「で、どうすんの? その契約」
「え?」
「受け入れるのか、断るのか、ってこと」
ちょうど店員が到着する。
妃花は、ハイボールをメガジョッキで頼んだ。
店員が立ち去っても私が何も言わないことに業を煮やしたのか、妃花が追撃してくる。
「そもそも、なんていう財閥の誰なの? 有名なんでしょ?」
「いや、今の日本に財閥っていうのはないから、旧財閥、っていう扱いになるんだけど」
「そんな建前はどうでもいいの! 似たようなもんでしょ。どこの誰なの?」
またもや口を噤んでしまった。
霧島尊流の名前まで出してよいものか。
妃花のことは信用しているけど、政略結婚阻止のために私が選ばれた、ってことまで話してしまった以上、具体名を出すのはまずい気がする。
「ごめん、妃花。名前を出すのはちょっと抵抗があるかな……」
「ふーん。そうなんだ。別にいいけど」
届いたばかりのメガジョッキを手に取りながら、何事もなかったように口に運ぶ。
特に不愉快そうでもない。
こういうサバサバしたところも妃花らしい。
三口ほど飲んでから、メガジョッキをテーブルにドンっと置く。
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