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【第4話】
妃花との飲みが終わり、22時頃に最寄り駅へ到着すると、私はすぐにスマホを取り出した。
そんなに悩むなら付き添いで来た初恋の男に相談してみればいいじゃん、という妃花のアドバイスに従い、七咲君へ電話をかけることにしたのだ。
相談もさることながら、あの七咲君とお話できる貴重な機会を、みすみす見逃すことなどできない。
ちなみに妃花には、七咲君への淡い恋心が再発していることは伏せておいた。
深い意味はないのだけれど、中学の初恋を引きずっている恋愛脳だとバカにされそうだったから何となく。
実際、私はやや恋愛脳なところがある。
初恋は中1と遅めだけれど、その頃は七咲君に夢中になっていたし、高校に入ってからも、すぐに好きな人ができた。
ここ数年は彼氏がいないけど、それは、借金返済や妹の学費を稼ぐため働き詰めになっていて、心にも時間にも余裕がないからだ。
「あ、もしもし、上田?」
3コールほどで、爽やかな七咲君の声が私の耳に運ばれてきた。
七咲君への電話は、特に緊張せずにできた。
霧島尊流の件で相談がある、という大義名分があるから。
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