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「急にごめんね。今って大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ」
「えっと、あのさ……」
しばらく口ごもっていると、
「尊流のことだろ?」
七咲君がすぐさま言葉を足してくれた。
そのまま七咲君が続ける。
「いくら大金を提示されたからって、そんな簡単に呑み込めないよな。そもそも上田は、中学の時からやたらガードが固かったし」
「え? そうだったっけ」
「とぼけるなって。中学の3年間で、上田にコクって撃沈した奴を数えたら両手じゃ足りないだろ」
「まあ……そうだったかな」
あの時は七咲君一筋だったから、誰から告白されてもまったく響かなかったっけ。
今は、違う理由で断り続けているけど。お金がなくて恋愛している場合じゃない、っていう悲しい理由で……。
「ってかさ、なんで上田は中学の時に彼氏を作らなかったんだ? あんだけモテてたなら、選び放題だっただろ」
七咲君が好きだったから。
ここで素直にそう言えたら、どんなにスッキリするだろう。
でも、そんなこと恥ずかしくて言えるわけがない。
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