【第5話】

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【第5話】

「よぉ、もう帰ってたのか」  七咲君との電話から2日後の夜。  インターホンが鳴ったので、カメラ越しに相手を確認してからドアを開けると、そこには霧島尊流が立っていた。  腕組みしながら、ややアゴをくいっと上げ、私を見下ろすようにしながら。 相変わらず不遜な態度だ。  つい、当たりもきつくなってしまう。 「今日はちょっと早めに帰ってきたの。あんたが来る日だからね。ありがたく思いなさいよ」 「ふん、『あんた』ときたか。呼び方といい言葉遣いといい、瞬との扱いの差がすごいな」 「当たり前でしょ。七咲君とは同級生で、同じクラスになったこともあったんだから。完全な他人のあんたと同列なわけがないじゃん」  言い返してくるかと思ったけれど、霧島尊流は無表情のまま私の家へと入ってきた。  何を考えているんだろう。  わかりづらい男だ。  私の前をずかずかと歩きながら、リビングへと向かう霧島尊流。  なんで私が後ろを歩いているんだ?  リビングでは、絨毯の上で正座しながら固まっている寧音がいた。  霧島尊流は、寧音の存在を無視するかのように、3日前にも座っていたソファにドカっと腰掛けた。 「それにしても、貧乏なくせにカメラ付きインターホンがあるのか。そういや、ここの家賃は2LDKで10万円だったな。辺鄙なこのへんの相場から考えると若干高めだ」  何でもよく調べている。  きっと、私の仕事もすべて把握しているのだろう。 「女の二人暮らしだからね。多少高くても、セキュリティにはこだわったの。寧音に何かあったら大変だから」 「ふん、妹想いだな」  褒めてるのかバカにしてるのかよくわからない表情を浮かべている。  どう反応していいかわからず、つい睨みつけてしまった。
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