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「おいおい、仮にもこれから婚約者になろうって相手に対して、その顔はないだろう」
「まだ決まったわけじゃないでしょ?」
「いいや、決まってるはずだ。あの破格の条件を蹴るバカはいない」
悔しいけど、その通りだ。
しばらく婚約者のフリをするだけで5000万円。政略結婚阻止というミッションが完了すればいつ別れてもOK。万が一霧島尊流に惚れてしまった場合は、そのまま結婚するのもアリ。
まさに、至れり尽くせりな条件だろう。
2000万円の借金とかわいい妹の学費に困っている私には特に。
だけど、どうしても確認しておかなければならない部分がある。
「……あんたの言う通り好条件だし、依頼を引き受けてもいいのかな、っていう方向には傾いてる。だけど! 一つだけ条件があるの」
「条件? なんだ、金を吊り上げる気か」
「違うわよ! 失礼なこと言わないでよね」
「じゃあ、何なんだ?」
「……婚約者のフリをしている最中でも、やめてほしいことがあるの。例えば……その……キス、とか、私の……胸に触るとか……あと……その……」
「SEXか?」
ド直球の言葉に、思わず言葉が詰まる。
目のやり場に困り、寧音を止まり木にすると、目を丸くしながら頬を紅潮させている。
私たち姉妹の動揺など置いてけぼりにするように、霧島尊流が泰然と言う。
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