【第5話】

2/5

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
「おいおい、仮にもこれから婚約者になろうって相手に対して、その顔はないだろう」 「まだ決まったわけじゃないでしょ?」 「いいや、決まってるはずだ。あの破格の条件を蹴るバカはいない」  悔しいけど、その通りだ。  しばらく婚約者のフリをするだけで5000万円。政略結婚阻止というミッションが完了すればいつ別れてもOK。万が一霧島尊流に惚れてしまった場合は、そのまま結婚するのもアリ。  まさに、至れり尽くせりな条件だろう。  2000万円の借金とかわいい妹の学費に困っている私には特に。  だけど、どうしても確認しておかなければならない部分がある。 「……あんたの言う通り好条件だし、依頼を引き受けてもいいのかな、っていう方向には傾いてる。だけど! 一つだけ条件があるの」 「条件? なんだ、金を吊り上げる気か」 「違うわよ! 失礼なこと言わないでよね」 「じゃあ、何なんだ?」 「……婚約者のフリをしている最中でも、やめてほしいことがあるの。例えば……その……キス、とか、私の……胸に触るとか……あと……その……」 「SEXか?」  ド直球の言葉に、思わず言葉が詰まる。  目のやり場に困り、寧音を止まり木にすると、目を丸くしながら頬を紅潮させている。  私たち姉妹の動揺など置いてけぼりにするように、霧島尊流が泰然と言う。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加