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「どうしたの上田? 妙におとなしいじゃん。もっと元気で活発なイメージだったのに」
「いや、あの……」
「おい、瞬。もういいから、さっさと俺に会話のバトンを渡せ」
七咲君の隣りに座るキザったらしい男が、キザったらしいセリフを吐いた。
座っているからはっきりとはわからないけれど、身長はかなり高そうだ。180cmは確実に超えているだろう。
ややカールした黒い短髪がやけにオシャレだ。
キザなセリフを吐くだけのことはある。
「あ、そうか。悪い悪い」七咲君が、私と同じぐらいの長さがありそうな茶色がかった髪をかき上げる。「あのさ、こいつ、霧島尊流っていうんだ。知ってる?」
知ってるかどうか聞くということは、有名人なのだろうか?
妙に鋭い目つきだけが気になるものの、美形であることは間違いない。七咲君のようなかわいい系イケメンではなく、クール系のイケメン、といったところか。
もしかしたら名のある著名人なのかもしれないけれど、生憎とまったくわからなかった。
「いや、知らないけど……」
「あ、いきなりフルネームを言われてもわからないよねぇ。霧島グループ、っていえばわかるかなぁ?」
えっ?
旧財閥で、今でも経済界に異常なまでの影響力を持っている、あの霧島グループっ?
「それって、あの――」
「もういい。そっから先は俺が話す」霧島尊流と紹介された男が割り込んできた。「上田サクラ。今日は、お前に用事があってここまで来てやった」
足と腕を組んだまま、偉そうな口調で引き続き宣う。
「面倒くさいのは勘弁だから、さっさと用件だけ話す。――5000万払うから、俺の婚約者になれ」
「……はぁっ?」
あまりにマンガチックでバカらしい申し出に、ついワンテンポ返事が遅れてしまった。
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